脊椎外科

新山手病院では、これまでにも年間約80件以上の脊椎手術を実施してきましたが、2019年4月に新たに脊椎外科指導医が着任し、脊椎外科センターとしての活動を開始しました。脊椎外科センターでは、主に下記の疾患を対象としています。

腰部脊柱管狭窄症

腰部脊柱管狭窄症はご高齢な方にはきわめてポピュラーな変性疾患です。薬物療法などの保存療法が基本ですが、間欠性跛行が増悪する場合、下肢筋力が低下してきたとき、膀胱直腸障害が出現した場合などには積極的に手術を行っています。
脊柱管の部分的な狭窄のみの場合には、除圧手術でも十分で、椎弓切除術の良い適応です。狭窄範囲、年齢などにより内視鏡下椎弓切除術(MEL)か従来型の椎弓切除術かを選択します。腰椎の不安定性を伴う場合や、椎間孔狭窄が強い場合には固定術も併用します(図1)。

図1

【図1】

症例により、後方からの椎間固定(TLIF)か前方・後方両側からの固定(OLIForXLIF)を選択しますが、スクリューやロッドの刺入は、低侵襲化を目的に経皮的に(PPS)行う機会が増えています。(図2)。

図2

【図2】PPS

当センターでは全ての術式が可能ですが、スクリュー挿入時の安全性を向上させるため、手術中にCT画像のような断面像が撮影できる3次元Cアーム(Siemens社のARCADIS)を導入しています(図3)。

図3

【図3】ARCADIS

また、腸骨スクリュー挿入時や頚椎固定時など、より精密な操作が要求される場合には、ナビゲーションも併用しています(図4)。

図4

【図4】術中ナビゲーション

腰椎の多椎間固定では、固定角度の妥当性が隣接椎体合併症や頚胸椎部の症状にも大きく影響しますので、全脊椎撮影を行い、LL-PI等の指標を評価した上で手術を行っています(図5)。

図5

【図5】

頚部脊柱管狭窄症

変形性頚椎症、発達性脊柱管狭窄、頚椎後縦靭帯骨化症などによって脊柱管に狭窄が生じると、頚髄が圧迫され、四肢の知覚障害や筋力低下、排尿・排便障害などを主症状とする頚髄症が発生します。変形性頚椎症などの緩徐に進行する病態の場合には、脊髄がかなりの程度まで圧迫されても無症状であることも珍しくはありません。しかし、そのような状態で急激に外力が加わると、頚髄損傷が発生して、とくに上肢の巧緻性障害など、重篤な障害が残存するリスクがあります。一般に、頚髄症のcritical pointは、X線計測における有効脊柱管前後径が8~10ミリ以下と考えられています。当科では、症例に応じて、正中縦割法ないし片開き式椎弓形成術を選択しています(図6)

図6

【図6】

腰椎圧迫骨折

高齢者腰椎圧迫骨折の多くは、保存的治療で良好な結果が得られますが、一部は偽関節化して疼痛が慢性化します。また、前方椎体高が後方椎体高の1/2以下に減少してしまうような高度な楔状変形が生じている場合も同様です。このような患者さんは椎体の高さを回復し、異常可動性を固定する経皮的椎体形成術(BKP)の良い適応になります(図7)。BKPを行った場合、術直後から疼痛が著明に改善し、早期退院も可能です。満足度は非常に高い手技ですが、もともと骨粗鬆症が強い場合には、続発性に隣接椎体が骨折するリスクがあります。そのような続発性骨折を減らすため、当該椎体の上下1~2椎間の固定を追加することもあります(図8)。

図7

【図7】

図8

【図8】

椎間板ヘルニア

椎間板ヘルニアの8割は保存療法で症状軽快しますが、2割は手術が必要になるとされています。十分な保存治療に反応しない場合に手術適応があります。また、麻痺や膀胱直腸障害が出現している場合には早期手術をお勧めしています。当院では内視鏡下腰椎椎間板摘出術(MED)などの低侵襲手術も可能となっています(図9)。

図9

【図9】MED

脊椎損傷

若年者の脊椎損傷は、高所墜落や交通外傷などの高エネルギー外傷が多くを占めますので、破裂骨折となることも稀ではありません。椎体後方1/3にまで破壊が及ぶ不安定型の破裂骨折は骨片が脊柱管内に突出し、麻痺の原因になり得ますし、高度な変形を残せば慢性腰痛に悩まされることになりますので、PPSによる内固定や椎体形成術などが適用されます(図10)。

図10

【図10】第2腰椎破裂骨折

転移性脊椎腫瘍

転移性脊椎腫瘍は疼痛や続発する対麻痺などによってQOLを著しく低下させます。当院では、全脊椎MRI検査や体幹拡散画像撮影(BodyDIWI)等を実施して早期発見に努め、椎体破壊が懸念される病変が見つかれば骨折予防の固定を行った上で(図11)、高度な線量集中が可能な強度変調回転放射線治療(VMAT)照射を実施しています(図12)。

図11

【図11】

図12

【図12】VMAT